中原エリアに住む・働く・生きる魅力的な人たちをインタビュー。がんばる誰かの日常が、誰かの背中をそっと押すような、そんなきらめく人たちをご紹介します。

場所に根付いた 「土着系大家」 を名乗る 4 代目が目指す、入居者の 「幸せ達成率」 を高めるコミュニティ的賃貸ライフとは 【後編】:石井 秀和(株式会社南荘石井事務所 代表取締役)

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前回、石井さんが自分らしい「大家業」を見出すまでの幕開け前夜についてのお話をうかがいました。後編では日々の活動からぐっと深みを増し続ける石井さんのビジョンについて語っていただきました。暮らす街はまるで舞台であり、そこで起きる一人ひとりの生活を応援する頼もしい姿がそこにありました。

石井 秀和
株式会社南荘石井事務所代表取締役。 1975 年、神奈川県川崎市生まれ。小中と育った地元を出て、東海大学理学部物理学科卒業後、日本オリベッティ株式会社でエンジニアとして経験を積む。 2000 年、父が代表を務めていた南荘石井事務所へ入社し、 2013 年、父の跡を継ぎ現職。

話題づくりや機械的に人を呼び込んでもダメ。
自分とは合わない街で暮らすのは悲劇になってしまうから

4 代目で継承により土地に縛られた大家、いわゆる 「地主系大家」 として僕は賃貸物件を守ってきました。投資用物件と違って、エリアを自由に選ぶことができません。でも一度外に出たこともあり、今では武蔵新城という、自分が生まれ育った街の魅力を改めて感じているのです。最近では、大手 IT 企業が近隣エリアに本社を構えたりと、周辺のにぎわいも見られるようになりました。それに、古くから続く商店街が 8 つもある武蔵新城には、個性豊かな 250 の飲食店も頑張っていて、現在進行形でいきいきとした活気を放ち続けています。郷土芸能保存会や盆踊りなど、地域性のある活動も継続していて、こうした以前からの住人と、新たにこの地で暮らすようになった人たちが一緒になれば、もっと街のファンが広がるのではないかと考えるようになりました。

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そのためにも、新旧の人、もの、ことが関わってミックスされることで生まれるにぎわいを街が持つ、今のパーソナリティとして打ち出したい。ワークショップやマルシェなどは、こうした思いも併せ持つ大切なイベントです。こうした特性を打ち出すことで、新しくこの地の空気感をセールスポイントとして、人を呼び込みたいとは思っていますが、どんな人でもいいとは考えていません。街があって、そのなかに住まいがあり、もしその相性がミスマッチであると、住んでいて幸せとは言えないでしょう?入居者と大家の大切にするものがなんとなく似ていること、これがとても大切です。それなので、僕が発信し続けるさまざまなかたちでの自己表現は、最終的に管理する物件の個性に反映されていくのだと考えていて、するとそこに共鳴した入居者さんが集まってくる。この好循環の集積が街になる。だから、機械的にメリットだけを打ち出して話題づくりをするのはナンセンスです。いかに自分らしさを表現するかであり、そこに来て集ってくださるなら 「幸せ成就率」 に貢献できる。

 

人が暮らす毎日は、尊い瞬間の積み重ね。
だからこそ入居者の人生に貢献する仕事として「大家業」を今日も生きる

hidekazu_07以前ある方がおっしゃった。 「大家とは、人生貢献業」 だ、と。ただ住まいを提供しているのではなく、人が住まえば、そこに暮らしが生まれる。暮らしとは人生の悲喜こもごものワンシーンの積み重ねです。人生の大切なひとときを確かにそこで生きた、という記憶は誰しもがそれぞれに持っていて、 「あの部屋に住んでいたとき、子どもが生まれた」 とか、 「家族と離れて最初に住んだあの土地を忘れられない」 とか。そうか、大家って、そんなふうにたくさんの方の人生に住まいや暮らし方をとおして貢献することができる仕事なんだ!以来、僕はそこを目指しています。

だからこそ、迷いもすべて外に出して、いろいろな方と一緒に考えていく。イベント化してしまうことで最終的にそこにオリジナリティや空気感が出てくるものだと思うから。そして、そうしたことをきっかけにこの街に来てくださったそれぞれの方が、もともとこの地で暮らしていた方とつながりあって、居心地の良い街を共に紡いでいけたら最高にうれしく思いますよ。結果、たとえ僕の管理する物件を出ても、 「部屋は変わってもこの地で暮らしたい」 と、街からは離れない人が増えていくんじゃないかと思っていて。かつてを土地に縛られた 「地主系大家」 と表現しましたが、今はこうした思いや活動から、土地に根付いた 「土着系大家」 を名乗るようになりました。そんなわけで今日も、僕は武蔵新城を走り回っています (笑) 。

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